【2024年版】知的障害で障害年金の申請は難しい?注意点など社労士が解説!
知的障害とは?
知的障害とは、以下の3つの基準があることで社会生活を過ごす上での困難さを感じ、支援を必要としている状態のことをいいます。
- 知的能力(IQ)が70未満
- 日常生活や社会生活への適応能力が低い
- 発達期(18歳以下)に生じている
重症度 |
IQ |
特徴 |
軽度 |
約50~70 |
・支援があれば、読字や金銭などの概念を理解することができ、また買い物や家事なども1人でできるようになる。 |
中等度 |
約36~49 |
・読字や金銭などの概念は小学生レベルにとどまり、常に支援が必要である。また買い物や家事など1人でできるようになるまでは長い時間をかけて支援が必要である。 |
重度 |
約20~35 |
・読字や金銭などの概念について、ほとんど理解することが難しく、常に支援が必要である。また食事や身支度、入浴などを含むすべての日常生活上の行動では、継続的な支援が必要である。 |
最重度 |
約19以下 |
・認識できるものは目の前にある物理的なものに限り、常に支援が必要である。また食事や身支度、入浴などを含むすべての日常生活上の行動では、他者の支援がないと難しい状況である。 |
障害年金とはどのような制度?
みなさんは『障害年金』という言葉を聞いたことはありますか?
このページを見られている方には失礼な質問かもしれませんが、簡単に説明します。
日本には公的年金があります。そこにはさらに①20歳以上の全員が強制加入する国民年金(基礎年金)と、②主に会社員の方が加入する厚生年金があります。そして、年金には、何か起きたときに生活費の一部を支給しましょうという所得保障という意味があります。
では次に、その『何か』とはどんなものなのか見ていきましょう。
1番有名なのは、『老齢年金』です。これは説明するまでもなく、一定の年齢(現在は原則65歳)になった時に受給できるものです。2番目に有名なのは『遺族年金』です。これは家族が亡くなったときに受給できるものです。しかし、家族が亡くなったからといって必ず受給できるものではありません。条件がいくつかあり、その条件を満たした場合に受給できます。
3番目にようやく『障害年金』が出てきます。これも障害をおった(病気になったりケガをしたり)から必ず受給できるものではなく、条件を満たさなければ受給できません。しかもその条件は意外と厳しく、ケースによってはご自身で請求手続を進めることが大変な場合も多いです。
勿論、障害の程度が軽く、年金をもらえないケースでは仕方ないと思います。ただ、本来は障害年金を受給できる程度なのに、手続が複雑で、もしくは、きちんと内容を知らないまま手続をした結果、受給できない方も少なからずいます。これでは、せっかく所得保障をしようとした年金制度が無意味になってしまいます。
全てのケースに当てはまるわけではありませんが、障害年金を受給することにより経済的な不安が減り、その分治療に時間を使うこともできます。
当事務所では、本来は受給できる方なのに、手続の不備から受給できないケースを減らしたいという思いからサポートしていきたいと考えています。
※年金制度は、基本的には自動的に受給できるものではなく、請求等の手続が必要になるので、ご注意ください。
知的障害で障害年金を請求するための条件
(1)被保険者要件(初診日要件)
被保険者要件とは、障害の原因となった病気やケガで初めて医師や歯科医師の診療を受けた『初診日』において、どの年金制度に加入していたかということです。
国民年金に加入していた方は『障害基礎年金』、会社員や公務員で社会保険に加入していた方は『障害厚生年金』を請求することになります。
ただし、知的障害は先天性(生まれつき)の疾患のため「20歳前傷病」となります。
「20歳前傷病」の場合には初診日の証明は必要なくなります。
こちらは大人になってから知的障害が発覚した場合も同様です。
(2)保険料納付要件
保険料納付要件とは、『初診日の前日』において、保険料の納付要件を満たしているかどうかを見ます。
ですが、こちらも「20歳前傷病」の場合には要件を満たしている必要はありません。
初診日要件と同様に大人になってから知的障害が発覚した場合も同様です。
(3)障害等級該当要件
読んで字のごとく、障害状態が定められた等級に該当しているのかを見ます。その障害の程度を認定する時点は、①初診日から1年6か月後の『障害認定日』と②現在の『請求日』(ケースにより異なる)です。
この障害認定日の『1年6か月後』というのは、病気やケガによっては早まるものもありますが、知的障害などの精神疾患では、原則通りの期間を待たなくてはなりません。
また程度については、知的障害の場合、「障害基礎年金」のみの対象となりますので、障害基礎年金1級又は2級に該当している必要があります。
知的障害の『障害認定基準』
(1)『精神の障害に係る等級判定ガイドライン』
知的障害などの精神障害・知的障害は検査数値など客観的な基準を設けにくいため、認定する医師によって等級判定に差が出ることは否めません。実際に、かつては年金の審査が都道府県ごとに行われていたため、たまたま住んでいた地域によって支給・不支給に大きな差が生じていることが問題になっていました。
そこで、『精神の障害に係る等級判定ガイドライン』(平成28年9月1日施行)により、上記の等級判定のばらつきを解消するようになりました。
そして、このガイドラインの特長は診断書記載事項と障害等級との関係性を数値で示し、数値化できない記載事項についての等級判定への考慮方法を明確にし、そのステップを明示した点があります。
(2)「日常生活能力の平均判定」とは
診断書裏面にある『日常生活能力の判定』を数値化して出した7項目の平均値です。それぞれの項目には4つの段階が示されていますが、比較的、日常生活に支障がないものを1、日常生活に支障が大きいものを4として、合計を7で割って算出します。
(3)「日常生活能力の程度」とは
診断書裏面にある「3日常生活能力の程度」のことです。5段階評価のどれに該当するのかを医師が判断します。
(4)ガイドラインで定められている障害等級の目安
「日常生活能力の程度」の評価及び「日常生活能力 の判定」の評価の平均を組み合わせたものが、どの障害等級に相当するかの目安を示したものです。
また、総合評価の際に考慮すべき要素の例 診断書の記載項目(「日常生活能力の程度」及び「日常生活能力の判定」を除く。)を5つの分野(現在の病状又は状態像、療養状況、生活環境、就労状況、その他)に区分し、分野ごとに総合評価の際に考慮することが妥当と考えられる要素とその具体的な内容例を示したものが表にまとめられています。
(5)等級判定にあたっての留意事項
(1)「判定平均」と「程度」との整合性が低く、参考となる目安がない場合は、必要に応じて診断書を作成した医師に内容確認をするなどしたうえで、「判定平均」と「程度」以外の診断書等の記載内容から様々な要素を考慮のうえ、総合評価を行います
(2)目安が「2級又は3級」など複数になる場合は、総合評価の段階で、両方の等級に該当する可能性を踏まえて、慎重に等級判定を行います
(3)この目安は、総合評価時の参考とするが、個々の等級判定は、診断書等に記載されている他の要素も含めて総合的に評価されるものであり、目安と異なる認定結果となることもあり得ることに留意して用いる必要が有ります。
障害年金の請求(申請)手続の進め方
(1)受診状況等証明書
この『受診状況等証明書』は、初診日を証明するために医師に作成してもらうものです。
言葉にすると、すごく単純なものに聞こえますが、とても大事な証明になります。というのも、初診日が障害年金の3要件(①被保険者要件、②保険料の納付要件、③障害の等級要件)の基準になるからです。
①では、どの年金制度に加入していたのか。②では、初診日の前日において保険料納付要件を満たしているのか。③では、初診日を起点として1年6か月後が障害認定日となり、その時点での診断書が必要になるからです。
つまり、この証明書を取得できるかどうかにより、次の手続に進めるかが決まると言っても過言ではありません。それほど大事なのですが、例えば、治療の途中で転院していて、初めに診療を受けた病院が廃院していたり、もしくはカルテの保管期間である5年を経過していて証明書が取得できない場合などがあります。
勿論、そのような場合に備えての手続(制度)はありますが、なかなか厳しい状況になります。この場合には、専門家である社会保険労務士に依頼することをお勧めします。
なお、一度も転院していない場合には、この受診状況等証明書は不要となります。
(2)診断書(精神障害用の診断書)
まず障害年金の裁定請求で使用する診断書は8種類あります。
精神の障害用は「様式第120号の4」ですが、もし他の障害を併存している場合には、状況によって他の診断書も必要になります。
さらに、診断書の必要となる通数に関しては知的障害の場合、「20歳前傷病」となりますので、診断書1通で、20歳の誕生日の前日(障害認定日)の前後3か月以内のものが必要となります。
(3)病歴・就労状況等申立書
「病歴・就労状況等申立書」は、手続において自分自身の言葉で状況を伝えられる書類です。確かに、何をどのように書けばいいのか分からないところもあると思いますが、診断書や他の書類において、点と点をつなぐ線の役目になり、第三者が読んだときに病気の全体像や日常生活と就労の支障をイメージできるかを意識します。
ただ、ここで伝えるのは具体的な病気やケガによる支障です。経済的な困窮や家庭環境の不和など一般的には辛く同情してしまうことでも、この手続では影響しないので注意しましょう。
病歴は3~5年に区切り、期間をあけずに状況を書きます。なお、先天性疾患(知的障害など)は0歳から20歳までの治療経過や病状が記載されていないと書類不備となるので注意しましょう。
他には、日常生活は一人暮らしを想定して判断し、就労しているときには、職場で、どのようなサポートを受けているのかも記載するようにします。
どうしてもご自身や家族が書けないときには、専門家である社会保険労務士に依頼することを検討しましょう。
受診していなかった期間について
病気やケガが治療により回復して社会復帰したものの、しばらく経って再び悪化してしまうこともあります。このような場合、社会復帰した時期が一定期間あるなら、その期間を「社会的治癒期間」として、再発後に受診した日を初診日とすることができます。
社会的治癒とは、「医学的な治癒や完治とまでいえなくても、通院治療や投薬の必要がなくなり、社会復帰した状態が一定の期間続くこと」をいいます。次に「一定の期間」とは、知的障害などの精神疾患では状況にもより変わりますが、およそ5年間程度です。
この社会的治癒期間を主張することにより、初診日を再び悪化した日に、つまり後ろにずらせることにあります。そうすると、以下のようなメリットがあります。
①初診日を証明する「受診状況等証明書」について、カルテ廃棄等により確認できないことを防げる可能性があります。
②過去の病気やケガの時に、初診日の前日における保険料納付要件を満たしていなかった場合において、納付状況をよくしておくことも出来ます。
③過去のに対し、初診日が後ろにずれることにより、仮に厚生年金に加入していれば、障害厚生年金を請求できる可能性が出てきます。の病気やケガが20歳前傷病だったときに、基本的には障害基礎年金しか請求できない
この考えは、実務的にすごく助かるものですが、原則的な考え方ではないため、それなりの裏付け資料を求められることがありますので、十分準備することが大切になります。
知的障害で障害年金を請求するときの注意点
(1)日常生活は、きちんと診断書に反映されていますか?
皆さんは病院にどのぐらいの頻度で通っているでしょうか?また、その時に医師と話をしている時間はどのぐらいありますか?
診断書は、当然ながら医学的知識に基づいて書かれます。しかし、それ以外にも日常生活でのことも書かれます。つまり、普段の生活を医師が知らなければ、実際の生活よりも程度の低い障害だと書かれてしまうことがあります。これは医師に時間がないことにより起こってしまうものです。
ここで、専門家である社会保険労務士に依頼するメリットとして、医師にどのように事情を伝えるのかを手伝ってもらえる店があります。社会保険労務士は依頼者からポイントなるのは何なのかを意識して聴き取りするので、医師へ伝えるのも楽になります。
(2)精神科の受診日が初診日とは限りません!
初診日を確認する際に気をつけたいのが、特に知的障害などの精神疾患では、人により様々な症状が出るため、例えば初めに内科や脳外科などに診てもらうこともあり得ます。
このときは精神科とは関係なくても、当該内科や脳外科から証明書を出してもらいますので、ご注意ください。
(3)働いていると障害年金は受給できない?
この質問はたまに聞かれるものです。また、障害年金を受給している方からは「働いたら年金は支給停止されますか?」も聞かれます。
答えは、どちらのケースでも就労状況によるということになります。働き方も色々あり、障害者雇用枠で働いていたり、就労支援施設で働いている方もいます。ポイントとなるのは、就労時にどのような仕事をしているのか、どのようなサポートを受けているかによります。
なお、20歳前傷病による障害基礎年金を受給している場合は、所得の金額により減額または支給停止になることもあるのでご注意ください。
障害年金の無料相談受付中!
最後までご覧頂きありがとうございました。
障害年金は障がいをおってしまった際に所得を保障してくれる制度ですが、申請をしなければ受給できなかったり、
受給のためにいくつもの要件を満たし、書類を作成していく必要が有ります。
全てのケースに当てはまるわけではありませんが、障害年金を受給することにより経済的な不安が減り、その分治療に時間を使うこともできます。
当事務所では、本来は受給できる方なのに、手続の不備などから受給できないケースを減らしたいという思いからサポートしていきたいと考えています。
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最終更新日 3か月